SoundCloud、閉鎖のWeb3音楽サービス「Nina Protocol」を買収

ブロックチェーンを活用した独立系音楽プラットフォーム「Nina Protocol」が今年5月にサービス終了を発表してから約2カ月後、その資産をSoundCloudが買収したことがわかった。買収により、SoundCloudはNina Protocolが蓄積してきた編集コンテンツのアーカイブやジャンルマップを引き継ぐ。さらに、アーティストが同意すれば、楽曲カタログもSoundCloudの「クリエイターエコシステム」に移行できるという。
アーティストにはSoundCloud移行のメリットを提示
SoundCloudは、旧Nina Protocolのユーザーに向けて移行を促しており、その理由として「ロイヤリティを100%受け取りながらファンに直接販売できる」「コメントやDM、公開プレイリストを通じてファンコミュニティを強化できる」「マスタリングやプロモーション、無制限アップロード、オーディエンス分析といったツールを利用できる」という3点を挙げている。
「SoundCloudなくしてNinaはなかった」
Nina ProtocolのCEO兼共同創業者マイク・ポラード氏は、プレスリリースで次のように述べている。
「Ninaは常に、インディペンデントなアーティストを支え、音楽を前進させるコミュニティを記録することを大切にしてきた。SoundCloudがその土台を築いてくれたからこそ、Ninaは存在できた」
Nina Protocolは2021年、ジャック・キャラハン、マイク・ポラード、エリック・ファーバーの3氏によって設立された、Solana上に構築されたWeb3型の音楽配信・マーケットプレイスサービス。アーティストが直接リスナーに楽曲を届け、所有権や収益を維持できる仕組みとしてスタートし、後にレーベル向けの専用ページ機能なども追加された。ML Buchやユング・リーン、Ana Roxanneらのアーティストのほか、Warp、Hyperdubといったレーベルも利用していたことで知られる。
収益基盤の課題も指摘されていた
海外メディアComponentsが7月に公開した調査記事によると、Nina Protocolがサービス開始から終了までの間に集めた金額は約5万ドルにとどまり、約3万7000件の出品のうち約77%は購入されずに終わっていたという。今回の買収の詳しい条件についてSoundCloud側からの正式なコメントは伝えられていない。
エンタモ編集部の視点
ブロックチェーンを使った音楽サービスが終了し、その資産を既存の大手が引き取った。この構図そのものが一つの結論になっています。とくに引き継がれたのが編集コンテンツのアーカイブとジャンルマップだった、という点に注目したいところです。
残ったのは技術ではなく、人が積み上げた分類だった
ブロックチェーンで音楽を売る発想には、はっきりした利点がありました。中間業者を通さず、作った人が直接売れる。手数料の取り分も透明になる。理屈としては筋が通っています。
難しかったのは、聴く側の負担です。音楽を聴くという行為に対して、財布を用意し、手数料の仕組みを理解し、という手順は重すぎました。理屈が正しくても、越えなければならない段差が高ければ人は来ません。
もうひとつが出会いの問題です。音楽サービスの価値の多くは、知らなかった曲に出会えることにあります。これは技術の話ではなく、聴く人の数と、分類や紹介を積み上げる人の手による部分が大きい。小さなサービスがここで勝つのは容易ではありません。
だからSoundCloudが引き取ったものが示唆的です。技術基盤ではなく、編集記事のアーカイブとジャンルマップでした。数年かけて積み上げられたのは、結局のところ人が書いた分類だった、ということになります。
出典:Pitchforkより。翻訳・要約はエンタモ編集部。