AI楽曲のチャート入りに新基準、UMG・ソニー・HYBEらが提案

画像:I hear the roar of the big machine, two worlds and in between, hot metal and methedrine/dullhunk(BY-SA 2.0) / 出典 / ライセンス(本文の内容と直接の関係はないイメージ画像です)
UMG(ユニバーサルミュージック)、ワーナーミュージック、ソニーミュージック、HYBE、Believeなど主要音楽企業が、AIで制作された楽曲を音楽チャートの集計対象にするかどうかを判断するための新しい指針を共同で提案したことが分かった。ビルボードなど各国のチャート運営団体に向けて、統一的な基準づくりを呼びかける内容となっている。
提案された4つの条件とは
提案では、AIを使った楽曲がチャート集計の対象になるために満たすべき条件として、次の4点を挙げている。①制作に使用したAIプラットフォームが正規に許諾されたものであること、②著作権・著作隣接権・肖像権などの法律を遵守していること、③楽曲内でのAI使用が適切に開示・表示されていること、④楽曲が主に人間によって制作され、不正なストリーミング再生数の水増しなどチャート操作の懸念がないこと。声明では「人間主導の創作と、無許可のAIモデルによる完全な合成作品との間に明確な線引きを設ける枠組みになる」と説明されている。
「AI生成」と「AI補助」で線引き
今回の提案は、IFPIやRIAA、グラミー賞主催団体、SAG-AFTRAなどが以前に提唱した、ストリーミング上でAI楽曲に表示ラベルを付ける仕組みを踏まえたものだ。その仕組みでは、全編AIで作られた楽曲には「AI生成」、一部にAIを使った楽曲には「AI補助」というラベルを付けることが想定されている。今回レーベル側が示した提案では、このうち「AI生成」に分類される楽曲についてはチャート集計の対象から外すことを求めている。ただし、こうしたラベル制度・チャート基準はいずれも、ビルボードを含むどのチャート運営団体・配信サービスにも正式採用されていない。
各配信サービスの対応状況と背景
音楽配信サービス各社では既にAI楽曲への対応が進みつつある。DeezerやSpotify、Apple Musicはそれぞれ独自にAI利用の開示システムを導入し始めており、Tidalも今年6月、AI生成コンテンツを収益化しない方針を発表している。一方でDeezerは自社サービスへの毎日のアップロードのうち最大50%がAIによる完全生成だと主張したが、この数値についてはAI補助楽曲も含まれているとの指摘もあり、正確な実態はなお不透明だ。また調査会社Luminateの最新レポートによれば、回答者の42%が「生成AIで作られたと分かった楽曲への関心が下がる」と答えている。なお、RIAAやUMG、ワーナー、ソニーは2024年にAI音楽サービスのSunoやUdioを提訴しており、UMG・ワーナーはUdioと、ワーナーはSunoとすでに和解している。ソニーはSuno・Udio双方への提訴を継続中で、今回の提案にある「正規に許諾されたAIサービス」という条件が、係争中のサービスをどう扱うかという新たな論点も生みそうだ。
エンタモ編集部の視点
大手レーベルが足並みを揃えてチャート基準を提案する背景には、生成AIによる無許可の合成楽曲が既存の音楽ビジネスを侵食しかねないという強い危機感がある。「人間主導かどうか」を線引きの軸に据えた点は、創作の担い手を守る意志の表れだ。ただ、AI使用の「開示」をどう検証するかなど運用面の課題は残る。技術の進化に業界のルールが追いつこうとする、その過渡期の緊張が凝縮された提案といえる。
業界が先に基準を作るのは、法律を待てないから
新しい技術をめぐる法律の整備には時間がかかります。国会での審議、関係者の意見聴取、施行までの猶予期間。数年単位になるのが普通です。
その間にも技術は使われ続けます。基準がないまま既成事実が積み上がると、あとから作った規則が実態に追いつかなくなる。だから業界側が先に指針を出すという動きが起きます。
提案された4条件を見ると、線引きの考え方が読み取れます。使ったAIが正規に許諾されたものか、権利の処理は適法か、AIを使ったことを開示しているか、そして主に人間が作ったと言えるか。技術そのものを禁じるのではなく、手続きと開示で仕分けるという設計です。
この種の指針に法的な強制力はありません。ただし主要なレコード会社が揃って提案し、チャートの運営団体が採用すれば、実質的な標準として機能します。オーストラリアのチャートが同種の線引きを決めたことと合わせると、方向は定まりつつあると言えそうです。
出典:Billboardより。翻訳・要約はエンタモ編集部。